ジン横丁とビール街
ビール通りとジン横丁

今回はジンをより楽しんでいただくために、ジンの歴史についてお話していきたいと思います。

ジン(漢字:杜松子酒)というお酒は大麦、ライ麦、穀物などを原料とした蒸留酒にジュニパーベリーという木の実を加えたお酒のことを言います。

歴史

中世~19世紀まで

ジンのキーワードは、やはり「ジュニパーベリー」と呼ばれる杜松の木の実です。ジュニパーベリーは古くから利尿作用などの薬効が知られており、ペストが大流行したときはマスクに詰められていたりしたそうです。11世紀頃には既にジュニパーベリーを主体としたスピリッツを造っていたという記録が残されており、これがジンの発祥という説が現在では有力となっています。

1660年にはオランダのライデン大学医学部教授であるフランシスクス・シルヴィウスが解熱・利尿作用としてジュネバを造っていて、これが美味しい酒であったために薬用酒の枠を越えて一般に広まっていきました。1689年にはウィリアム3世がイングランド国王として迎えられジュネバがイギリスに持ち込まれたことで国民の人気が高まり、名前を短くしてジンと呼ばれるようになったそうです。

19世紀~20世紀

19世紀半ばに連続式蒸留器が開発されると、飛躍的に雑味の少ないピュアで度数の高いスピリッツができるようになり、それまでのジンの製法も大きく変化していきました。原料自体はほとんど変わらなかったのですが、連続式蒸留器でアルコール度数の高いスピリッツを造り、そこにジュニパーベリーやボタニカルと呼ばれる様々な植物やハーブなどの副材料を加えて単式蒸留をする技法が確立しました。これが現在のロンドンジン、ドライジン、ロンドンドライジンなどと呼ばれるものです。

ジン横丁とビール街
ジンの歴史

18世紀の産業革命でロンドンなどの大都市に労働者が流入してスラム街が形成されると、そこで安価で質の悪いジンが出回るようになり、ジン中毒という現象が起こっていました。上記の画像は「ビール通りとジン横丁」と呼ばれる風刺画で左の絵は裕福な人たちがビールを飲みながら活気ある街並が描かれ、右はジン中毒で廃れた街や人が描かれています。

このようなジンの歴史があったため、ジンは安価なお酒として歴史を刻んでいくことになります。

しかし良質なジンの味わいや風味は人に好まれ、美味しいため、今では世界的なお酒ブランドとして有名なタンカレーの創業者であるチャールズ・タンカレー氏が1830年に高級ジン造りを志してロンドンに蒸留所を造り、良質なイメージを向上していきました。

そして20世紀に入るとカクテルベースとして上流階級の間でも一般的になり名門貴族ウィンストン・チャーチルなどの貴族の間でマティーニの愛好家が増えていきました。

日本へジンが上陸

フランス革命戦争で領土を奪われたオランダ人のために現在の長崎出島で1812年(文化9年)に日本で初めてジンが蒸留されました。そこではオランダ人と協力してジンの他、ブランデーやビール造りもこの時に作られたそうです。しかしながら、杜松の香りなどが当時の日本には強く、あまり良いできでは無かったという記述が「日本想録」に記されているように、広がることが無かったそうです。

21世紀以降

2008年にシップスミス蒸留所がロンドンで200年ぶりに銅製の蒸留器を稼働して大きな話題となったのがきっかけとなり、そこから個性豊かで高品質なジン造りをする小さな蒸留所次々に誕生してクラフトジンが世界に広がりをみせます。

2017年、日本でもその勢いが瞬く間に広がり、前年対比が酒類業界でも類を見ない43倍の6億4000万円の輸出額を記録、翌2018年には、前年比の3倍となる19億9000万円の輸出額となり、ほぼ0だったジンの輸出市場は、わずか2年で焼酎を越えて蒸留酒としてはウイスキーに次ぐ輸出額となりました。2018年輸出額 : 日本酒222億円、ウイスキー150億円、ビール129億円、焼酎15億円)

2020年、日本において、新型コロナウイルスの流行により売れ残ったビールや食材などを賞味期限が無く保存も簡単にできるジンにする動きや世界の異常気象などの解決のためのカーボンネガティブ、SDG’sなどの観点から森林資源や製造方法にこだわる持続可能な開発を目的としたジンづくりが行われるようになる。

こうした環境に配慮したジンづくりを手掛けているのが南魚沼に拠点を置き、2019年12月に創業をした「ろくもじ株式会社」であります。ろくもじ株式会社は「自然×人×モノ」の循環をテーマに、持続可能な森林資源の開発を目指す為、新潟県の林業や里山の森林資源の活用をしながら、福祉施設で働く高齢者や障がいを持つ方などと協力して新しい地域の産業を生み出し、新潟発のクラフトジンを手掛けています。

まとめ

ジンの歴史から始まり、現在のろくもじ株式会社を知っていただくことで、ジンをより楽しんでいただき、それぞれのメーカーから出ているジンの物語などを想像しながら、是非美味しく楽しくジンライフをお楽しみください。

飲みすぎて「ジン横丁」のようにならないために、お酒は適度に楽しく飲みましょう。